ドゥテルテ大統領。 ドゥテルテ大統領が、あんなにアメリカ嫌いなのはどうしてですか。

ドゥテルテ大統領・フィリピンの今―政治、経済、外交安全保障、治安

ドゥテルテ大統領

World Now 2018. 05 ラフィ・ラーマ撮影/フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙提供 「ピエタ」の写真が問うもの 2016年7月、自転車タクシー運転手マイケル・シアロンは、バイクに乗った身元不明の2人組の男に射殺された。 殺されたパートナーを抱きしめるジェニリン・オライレスの写真は、キリストの亡きがらを抱く聖母像を意味する「ピエタ」と呼ばれ、世界中に広まった。 「麻薬犯罪者は殺せ」。 強い言葉とともに、使用者や密売人の殺害も辞さない態度で、麻薬問題の解消をめざそうとするフィリピン。 警察の麻薬犯罪捜査による死者が少なくとも5千人に上り、国際社会から批判をあびても、ドゥテルテ大統領の政策への支持は大きく減っていない。 暴力によって麻薬一掃をめざす「麻薬戦争」の功罪とは。 男性(49)は道路を指して、4年前の殺人事件を振り返った。 フィリピン中部レイテ島の町アルブエラ。 「麻薬王」カーウィン・エスピノサが武装した密売人らの集団をつくり、町を支配してきた。 カーウィンが経営するホテルの前で、スクールバスの運転手がカーウィンの車を追い越したとして停車させられ、乗車中の学生らの目の前で射殺された。 2016年の町長選にはカーウィンの父ローランドが出馬。 カーウィンの取り巻きの男たちが銃を手に、票集めに町を歩きまわった。 「町長が麻薬密売に関与していることは誰もが知っていたが、怖くて動けなかった」。 町長に当選した父ローランドのもとで副町長を務めていた、現町長のローサ・メネセス(66)はそう話す。 そんな折、16年6月に大統領に就任したのが、麻薬犯罪撲滅を掲げたドゥテルテだ。 フィリピンのドゥテルテ大統領=鈴木暁子撮影 「24時間以内に投降しろ、さもないと射殺する」。 就任2カ月後、ドゥテルテは広報官を通じてエスピノサ父子を名指しして呼びかけた。 警察に投降した町長のローランドは同年11月、刑務所内で警官に射殺された。 カーウィンは国外に逃亡していたところを逮捕され、裁判が続く。 誰も手が出せなかった麻薬王が「退治」されたのだ。 フィリピン危険薬物委員会の15年の調査では、10~69歳の推計麻薬使用者数は180万人。 人口の1.7%ほどにあたる。 「シャブ」と呼ばれる覚醒剤が広がり、問題になっていた。 「この国には麻薬中毒者が300万人いる」。 ドゥテルテは大統領選のさなかから、別のデータを使って問題の深刻さを主張。 当選すると、国内すべての町に麻薬の使用が疑われる住人のリストを提供させ、その家々を警官がじかに訪ねる捜査に着手。 「麻薬捜査中に警官が人を殺しても罪に問わない」と公言した。 政府発表によると、今年9月末までに取り締まり中に殺された市民は4948人。 実際は2万人以上が殺されたと主張する人もいる。 ドゥテルテ政権の麻薬犯罪対策を宣伝するポスター=鈴木暁子撮影 当局が暴力を麻薬犯罪一掃の手段とする「麻薬戦争」は、新興国で特に深刻だ。 タクシン政権下のタイでは03年、10カ月で約2600人が殺された。 米メディアによると、麻薬問題が深刻なメキシコでは06年以降、15万人が犯罪組織との関連で殺されている。 中毒者の家族だけでは抱えきれない問題だからだ。 マニラ首都圏で密売人が警察に射殺された後、近所に住む女性(35)は言った。 「ドゥテルテの麻薬対策に賛成だ。 麻薬売人がいなくなり、ずっと安全になった」 麻薬の使用者や売人らがいなくなったことを示す「麻薬一掃地区」ののぼりを掲げた町=フィリピン・レイテ島、鈴木暁子撮影 フィリピン政府は、今年9月までに覚醒剤1480キロを押収し、使用者のたまり場242カ所を解体、政府職員ら582人を逮捕したと主張する。 一方で、カーウィンのような「超大物」が麻薬捜査の獲物になる例はごく一部で、日々殺害が報じられる人々の多くは貧困層といわれる。 麻薬との関わりがはっきりしない人や子どもが、身元不明の犯人に殺される例も相次いだ。 ドゥテルテが麻薬対策に注力し始めたのは80年代から計20年以上務めたダバオ市長時代だ。 自ら町をパトロールし、「タタイ(お父さん)」と呼ばれた。 強権的なダバオ式政治を全国に広げ、強い大統領としての人気を確実にする手段の一つが麻薬戦争だったとみる人もいる。 今年9月の民間調査では、ドゥテルテをとても信頼すると答えたのは74%。 就任当初からわずかに下がったものの、高い水準を保っている。 【次の記事】.

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ロドリゴ・ドゥテルテ

ドゥテルテ大統領

ロドリゴ・ドゥテルテ氏がフィリピンの大統領に就任したのは2016年6月30日。 大統領に就任した直後には「麻薬戦争」を宣言し、麻薬の売人、使用者・容疑者を殺害する超法規的政策が実行に移されました。 日本国内にいる時は、ネガティブな報道を目にすることが多かったように思えたドゥテルテ大統領。 しかしながらフィリピン国民からの支持率は依然として高く、国民1200人を対象に2017年6月23~26日に実施されたソーシャル・ウエザー・ステーションズ世論調査によれば、ドゥテルテ大統領に満足しているとの回答は66%でした。 今回はフィリピン人講師のひとりに、ドゥテルテ大統領に対して抱いている印象を聞いてみました。 (あくまでフィリピン人ひとりの感想・観点を元にしています) この度、お話を聞いたのは…大学までジャーナリズム・マスコミ学を勉強していたという24歳の女性(職業:英語講師)。 ちなみに、フィリピンでは大学で報道について学んでいないとマスコミ業界に就職するのはほぼ不可能ということです。 「おおむね(ドゥテルテ大統領には)賛成しているわ。 もちろん、彼の政策を細かく見ていくと賛成するところと反対しているところがあるけれど」 そう語るフィリピン人講師。 彼女によると、おおむねドゥテルテ大統領の政策で意識しているのは6つあり、そのうち4つの政策には賛成、2つは反対だそうです。 薬物戦争…反対 「まず賛成していないのは薬物戦争ね。 しかし、就任後、予想以上に薬物の使用状況が悪化していたことに気づいた彼は、6年間の任期丸々を違法薬物対策に要する可能性があることを示唆しました。 「人を殺してまで取り締まることには反対だけど、違法薬物に対する取り締まりが必要なのは理解できる。 しかし、『いつ終わるの?』それが気になるわ」 アメリカとの国交断絶…賛成 ドゥテルテ大統領は、2016年9月5日のASEAN首脳会議ではオバマ大統領を「a son of a bitch(くそったれ)」と罵り、予定されていた首脳会談が中止に追い込まれました。 CNNによると、同年10月20日にも、北京市で開かれたビジネスフォーラムで演説し「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」と発言しています。 「アメリカとの国交を断絶するのには賛成よ。 アメリカには色々とされてきたもの(フィリピンのドゥテルテ大統領は今年8月7日、首都マニラを訪れたティラーソン米国務長官と会談し、アメリカとの関係改善を模索しています)」 中国との関係強化…反対 アメリカとの距離を置く一方、急速にフィリピンが距離を詰めているのが中国です。 南シナ海を巡る領土問題が両国の間には根強く残っており、「ほぼ全域の管轄権を主張」していた中国に対して、フィリピンは議論を続けてきました。 2016年7月には国際仲裁裁判所が中国側の主張を認めない判決を下したにも関わらず、ドゥテルテ大統領は中国側に優先する発言を繰り返しています。 「しょうがないのかもしれないけれど、中国とべったりすることによって、『南シナの領土については、もう中国に全部譲る』と言っているように聞こえるわ。 長い間中国の不当な主張と争ってきたのに、本当にそれでいいの…?」 大学授業料無償化…賛成 2017年8月3日、ドゥテルテ大統領はすべての国立大学の授業料を無償化する法案に署名しました。 この政策について彼女は高い評価を下していました。 「フィリピンにはざっくり言うとPublic(国立)、Semi Public、Private(私立)の3つのタイプがあるわ。 このうち国立大学の授業料が無償化されるのはとてもいいことだと思うわ」 ちなみに彼女はSemi Publicの学校出身。 しかし、この政策にもフィリピン内部では懸念が残されています。 彼女によるとフィリピンでは小学校から高校までPublicでも年間1000ペソ(約2000円)、Privateは年間20000ペソ(約40000円)かかるらしく、結果大学まで通うことのできる生徒は裕福な家庭出身であることが多く、「この政策によって恩恵を受けることができるのは結局裕福な層ではないか」という声もあるそうです。 全土禁煙化…賛成 2017年7月23日より、大統領令によりフィリピン全土の禁煙化が施行されました。 彼女はこれにもおおむね賛成。 なかでも着目していたのが、日本たばこ産業(JT社)によるフィリピンのたばこ製造会社、MC(マイティー)社の買収事件です。 両社の交渉によるとJTの海外事業を受け持つ日本たばこ産業インターナショナル社(JTI)が、MT社の製造部門などを450億ペソ(約1000億円)で買収する契約が締結されたということです。 「フィリピンの喫煙率は本当に高い(東南アジアのたばこ規制団体が2014年に発行した報告書によると、成人人口の約3分の1に相当する約1700万人が喫煙)ので、なんとかするべきだわ。 しかも、私が素晴らしいと思っているのはMT社の売却で得た収益を、Pension(年金)として高齢者のために使うと大統領が言っていることよ」 全国一律最低賃金の導入…賛成 ドゥテルテ大統領は2016年9月より全国一律最低賃金の導入に前向きな姿勢を示しています。 これには、首都圏の人口過密を軽減する狙いもあるそうです。 「実際には最低賃金で働いている人も数多くいるわ。 全国一律最低賃金の導入にはもちろん賛成だけれど、そうした状況の改善もこの国には必須だわ」 ドゥテルテ大統領の人柄 粗暴な言い方、率直な物言いで知られるドゥテルテ大統領。 しかし、彼女はこうした大統領の人柄が好きなんだそうです。 「確かに彼の言い方は乱暴で、反感を買うことも多いわ。 でも、彼の言っていることは真実ばかりだし、彼を責めることは難しい。 汚職の話を聞くこばかりだったいままでの大統領体制と違い、清貧だとも思うし、おおむね好感がもてるわ」 今回はあくまでフィリピン人講師のひとりの意見をピックアップしただけですが、ドュテルテ大統領が大勢の国民に支持されているひとつの側面を垣間見ることができた気がしました。

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ドゥテルテ大統領と議員200名給与1ヶ月全額寄付、コロナ対策1億円に 日本の国会議員年収2183万円(井出留美)

ドゥテルテ大統領

2020年4月5日、米国のは、ドゥテルテ大統領が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に1ヶ月分の給与を寄付すると報じた。 下院の議員200人は、政府の新型コロナ対策のための5000万ペソ(およそ1億737万円)の初期費用を集めるために、2020年5月分の給与を全額寄付することに合意した。 4月5日、同じくフィリピンのや、中国のなども報じている。 日本最大のビジネスデータベースサービスで検索したところ、フィリピンでの本件4月5日発表以降、4月11日現在までの間、日本の主要メディア150紙誌では報じられていないようだ。 過激な対応で知られるドゥテルテ大統領だが・・・ 2020年4月4日付のCNNは、ドゥテルテ大統領が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の一つである自宅待機を国民が破った場合、警官らが射殺も辞さない事態が有り得ると警告した」と。 それまでも、麻薬の取締りなどで厳しい措置を講じてきたドゥテルテ大統領だが、新型コロナという難局と闘う政府に対し、意外にも心ある対応を見せている。 共同通信の記事によれば、2019年3月時点で フィリピンは脱プラスチック対策も地道に進めている フィリピンというと、日本では「日本より下」という見方をする人が多いかもしれない。 だが、筆者は2011年から毎年フィリピンに渡航してきて、脱プラスチック対策などは、局所的ではあるが、日本よりもぐんと進んでいる印象を持っている。 フィリピンのセブンイレブンでは、今から5年前の2015年ごろには、首都メトロマニラではプラ袋を使わず、紙袋に切り替わっていた。 下の紙袋は2020年2月時点で、フィリピン・セブシティのセブンイレブンで使われている紙袋だ。 「生分解性」であることも明記されている。 フィリピン・セブシティのセブンイレブンでビン入り飲料を購入した際、紙袋に入れてもらった(筆者撮影) 地図上では見えないくらいの小さな島で、飲食店が軒並みのを見たときには本当に驚いた。 しかも店員に「これはなぜ使っているのか?」と聞いたら「海(の環境)を守るため」と、即座に答えが返ってきて、ますます驚いた。 フィリピンの小さな島の飲食店で使われているステンレス製ストロー(筆者撮影) インフラ不整備のため農産物の食品ロスは多いが価値の高い加工食品はロスにしない 2012年から2014年まで、筆者は、フィリピンでフードバンクを立ち上げようという日本のフードバンクのメンバーとともに、現地でどのような食品ロスが生じているかを調査していた。 フィリピンの国家食糧庁(NFA:National Food Authority)や大学、FAOフィリピン事務所、JICA(ジャイカ:国際協力機構)、食品企業、地域の役所などを廻った。 その結果、わかったのは、フィリピンでは加工食品の食品ロスが少ないということだった。 通常のマーケットで売れないからといって、すぐ捨てることはなく、第二の販売場所で売る。 それでも売れなければ第三の場で売る、といったように、とことんまで売ろうとするので、予想に反してロスは生じていなかった。 一方、農産物の食品ロスはそれに比して多かった。 冷凍・冷蔵設備が整っていないことや、国内の物流コストが高いこと、先進国に課せられた農産物の規格に合わないなどを理由に、農産物ではロスが生じていた。 このように、途上国でサプライチェーンの前半で食品ロスが発生しやすい傾向は、の報告書とも一致している。 ジェンダーギャップ指数、フィリピンは世界16位、ASEAN1位、日本は世界121位 筆者は、青年海外協力隊として、フィリピンで暮らしていた。 英語でのコミュニケーション能力の高さはよく知られていることだが、女性が組織のトップを務めていることなど、女性の活躍度も世界でトップクラスであることに、隊員時代、衝撃を受けた。 2019年12月に世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数によれば、である。 対して、日本は世界121位。 もちろん、一つ二つの面だけで「フィリピンすごい、日本だめ」と言うつもりはない。 日本にも誇るべき面がたくさんあることは、フィリピン人の友人からも再三聞かされている。 このことについて、で書いて、twitterに投稿したところ、 「(デンマークは税が高いからなのに)こういう、他国と日本を一点でしか比較しない人本当にバカだと思う」 出典:twitterの投稿より と書いてきた人がいた。 記事には、デンマークの所得税と消費税が高いことはきちんと書いてあり、それ以外に日本が学ぶべき点があるからこそ記事を書いているので、批判するなら記事を読んでからして頂きたい。 を見れば、一人あたりの名目GDPは、フィリピンが3,104ドル(2018年)で日本(39,306ドル、2018年)の10分の1以下。 ドゥテルテ大統領のこれまでの施策も、人権を考えると、全てが称賛に値するとは言えない。 2020年4月11日現在、フィリピンでの新型コロナウイルス感染症による死亡者は221名となっている(。 だが、今回の「1ヶ月分の給与全額寄付」の件は、国のトップ自ら給与を差し出すことで、国民だけでなく、国のトップも犠牲を払うのだという痛み分けの姿勢を示したとも言える。 憲法学者の木村草太さんは、BuzzFeedのインタビューに対し、 政府が常に批判的検証の対象となるのは当たり前です。 リアルタイムでどんどん批判をしていく必要があると思っています。 政府の活動に不適切だったり、サボったりしていることがあれば、国民はしっかりと表現の自由を行使して、批判すべき点は批判すべきでしょう。 出典: と答えている。 日本でも、国が大変な時期に、国会議員の給与を削減し、震災の救済資金に充てたことがあった。 かつて東日本大震災で庶民が苦しんでいたとき、旧民主党政権は国会議員の給与を1人当たり月額50万円削減することで、総額21億円を震災の救援資金に充てた。 国会議員の給与は、月額約129万円、ボーナスも年約635万円もある。 大臣や総理大臣はもっともらえる。 さらに領収書不要の「文書通信交通滞在費」が月額100万円もらえて、さらに「立法事務費」も月額65万円もらえる。 新幹線と飛行機の無料パスも付いている。 加えて、政党には莫大な金額の「政党交付金」が交付される。 出典: この記事を元に計算すると、国会議員の年収は2,183万円。 大臣や総理大臣はそれ以上だ。 記事の著者は「まだ議論は出ていないが、苦しむ国民のために政治家が身を切るような話が出てくることに期待したい。 」と述べている。 今の日本では、国のトップが給与もボーナスもそのままだ。 国民だけに痛みを命じ、経済的補償もしないからこそ、批判が噴出しているのだと思う。 参考情報 国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が毎年発表している、世界のSDGs達成度ランキング。 2019年6月に発表された結果では、 デンマークでは、企業や行政はどのような取り組みを行っているのだろうか。 筆者が2019年に取材した6つの事例のうち、1つをご紹介したい。 デンマークのジェンダー・ギャップは年々縮まってきている によれば、デンマークのジェンダー・ギャップは年々縮まってきている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p50-51より)。 デンマークでは、グラフの赤線で示すジェンダーギャップは年々縮まってきている(2019年1月報告「OECD Economic Surveys Denmark」p50-51より) 2019年以前のOECDの報告でも、家事などの無償労働への参加時間は、デンマークの男性が最多で、一週間に3時間6分という結果が出ている(最も少ないのが日本の男性で一週間に40分)。 実際、一週間のデンマーク滞在期間中、「成人男性と子ども」という組み合わせを、平日・休日に限らず、多く目にした。 下記の動画は、平日の公園で遊ぶ父親と子どもたちの姿だ。 ボールで遊んでいる父子の他にも、通りすがる人たちに「父と子」が複数見られる。 デンマークでも、出産により昇給や昇進への壁が生じるのは女性 とはいえ、デンマークの女性はすべて万々歳、というわけではない。 前述のOECDレポートによれば、より高いポジションへの昇進や、より高い給与を得る昇給などのチャンスは、男性では子どもの有無に左右されない一方、女性は子どもがいることで昇進・昇給に壁ができることが示されている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より)。 男性(グラフ右)の場合、子どもがいても(緑)いなくても(青)稼ぐ金額に差はないが、女性(グラフ左)の場合、子どもがいる(緑)ことで高収入を得る上で壁になっている(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より) デンマークでは、管理職のうち女性が占める割合は4分の1強 デンマークでは、管理職のうち、女性の占める割合は、全体の4分の1強に過ぎず、決して高くはない(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52より)。 とはいえ、日本の場合、デンマークの数値の、さらに半分程度と、よりいっそう低いのだが…。 管理職に占める女性の割合。 赤がデンマーク。 日本は左から2番目(2019年1月報告、「OECD Economic Surveys Denmark」p52-53より) デンマーク政府や王室をも動かす女性も登場 日本と共通する格差も見られるようなデンマークだが、デンマーク政府や王室をも動かすパワフルな女性も登場している。 写真中央、受賞するセリーナ・ユール(Selina Juul)(本人提供) 政府や食品企業に掛け合い、賞味期限表示の改善に取り組んだNPOの女性たち そして、セリーナと共に、賞味期限表示による食品ロスを減らすため、動いたのが、という、余剰食品をスマートフォンのアプリを介して低価格で提供するサービスを提供する女性たちだ。 デンマーク・コペンハーゲンにあるToo Good To Goのオフィス兼店舗(写真左、筆者撮影) 「賞味期限」は、品質が切れる日付ではなく、美味しさの目安に過ぎない。 だが、日本と同様、デンマークでも、誤解する消費者が多いという。 そこでToo Good To Goのマーケティング責任者、ニコライン(Nicoline Koch Rasmussen)とターニャ(Tanja Andersen)は、2019年2月、「賞味期限と消費期限の書き方キャンペーン」を実施した。 賞味期限が過ぎて、すぐ捨ててしまう消費者が多いので、その状況を改善しようと試みたのだ。 ニコライン(Nicoline Koch Rasmussen)(右)とターニャ(Tanja Andersen)(左)(筆者撮影) 最初にデンマーク政府(食糧庁)に連絡し、賞味期限表示の横に「多くの場合、賞味期限が過ぎてもおいしく食べることができます」と併記してよいかの確認をとった。 政府に表現のお墨付きをとってから、ユニリーバやカールスバーグ、オーガニックブランドや酪農協会のアーラという団体など、15企業と議論した。 食品のパッケージが新しく切り替わるタイミングで、賞味期限の横に「賞味期限が過ぎても多くの場合おいしく食べられます」という表示を入れることに成功したのだ。 2019年6月、小規模農場のオーガニック牛乳「ティーセ」が、四面ある牛乳パックのうちの一面を使い、 「ティーセ」が始めた賞味期限表示の説明。 「目で見て、鼻でにおいを嗅いで、舌で確認して、つまり五感で確認して大丈夫だったらOK」といった旨が書かれている(Too Good To Go提供) デンマークの成功にみならい、スウェーデンも賞味期限表示を改善 デンマークは、このような賞味期限の意味を消費者が理解し、食品ロスが減るように、行政と企業、NPOが協力して消費者啓発に取り組み始めた。 日本と同様、賞味期限表示は、デンマークでも表記が決められている。 法律の内容を変える、あるいは新たに作るのには年数がかかる。 が、たとえ法律を変えなくても、今、ここからできることはある。 彼女らは、政府や企業に必要性を訴え、彼らの理解を得てそれを実行したのだ。 これは一つの事例に過ぎないが、このことからも、「できるところからできることをやる」姿勢や、デンマークで「ヒュッゲ」と呼ばれる、居心地の良さや満足感のある暮らし方が感じられる。 今回の「賞味期限と消費期限の書き方キャンペーン」をする以前にも、デンマークでは、賞味期限を、ピンポイント表示ではなく、アバウトな時期を示す表示に変えることで、食品ロス削減に貢献したとのことだった。 2016年秋にスウェーデンの大学から来日した女性研究者に話を聞いた。 デンマークの成功事例を受け、スウェーデンでもそのような表示を始めたとのこと。 実際に、2019年、スウェーデンへ取材に行き、話を聞いてきた。 日本企業がSDGs先進国から学べることはとても多い このような、SDGsの先進国の事例は、SDGsへの取り組みを始めたばかりの日本企業にとって、非常に関心が高いようだ。 「海外の先進事例を教えて欲しい」ということで、食品関連企業始め、食品企業と取引している商社や、食品関連の研究機関、食品ロス削減のためのIoTやIcT技術を持つ企業、あるいは行政から委託を受けているシンクタンクなどから、面会でのコンサルティングのご依頼を頂いてきた。 筆者のオフィスまでいらして頂いた企業もあれば、筆者が先方へ出向き、複数の社員の方にお話したケースもある。 企業トップである経営陣への面会や、部署を横断的にまたいでの社内研修を請けた場合もある。 だが、依頼してくださる企業にとって、面会や研修は、日程や参加者の調整などに手間を要するし、コストや時間もかかる。 海外出張するにしても、予算や日数の関係で、かなわない場合もあるし、しょっちゅう行くわけにもいかない。 海外の食品ロス削減事例はメディアから発信されており、インターネット上で入手することはできるが、Google翻訳などの機能を使ったとしても、それなりの労力が必要だ。 そこで今回、で、このような海外事例や国内の取材を通して得た情報や学び、日本企業が参考にできることを、記事としてお届けすることにした。 これであれば、いつでもどこでも情報にアクセスして頂くことが可能になる。 筆者は、農林水産省の日・ASEAN食産業人材育成官民共同プロジェクト寄付講座の講師として、東南アジア10か国の大学にも定期的に出向いている。 今回は北欧の事例だったが、機会があれば、アジアの事例についてもお伝えしたい。 SDGsにこれから取り組む企業・行政や、海外出張などは予算などの関係でできないが、世界各国の先進事例を入手したい企業や行政の方などに、少しでもお役立てできるよう、食品ロスの観点から、SDGsの取り組みについてお伝えしていきたい。 どうぞよろしくお願いいたします。

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